🌙 SAIの物語 ──「言葉を綴るということ」

2024年2月27日。
私は note という小さな場所で、ひとつの扉を開きました。

そこからこぼれ落ちたのは、言葉にならない感情たち。
拭いきれない虚無、うまく生きられない自分。
それらをひとつずつすくい上げるようにして、
詩や物語を綴りはじめたのです。

最初はただの独白のようで、
「こんなことをして、何になるのだろう」と思っていました。
けれど「毎日書く」と決めてから、気づけば一年半──。

夜の海に落としたインクが星座に変わるように、
私の中から流れ出た言葉は “物語” というかたちを取り、
静かに息をしはじめました。

ひとりきりの時間から、生まれた世界

社会と距離を置いた八年間。
人と交わることが苦手だと気づいた私は、
そっと “外” を閉ざしました。

最初は心地よく、好きなものに囲まれた静かな時間。
けれど次第に、虚しさだけが残るようになりました。

ヒーローにもヒロインにもなれない私。
何者にもなれない自分。

それでも、差し出された手や、
黙って見守ってくれた家族のぬくもりが、
私の心を少しずつあたためてくれました。

生きる意味を、ことばにする

「どうせ人は死ぬのに、なぜ生きるのか?」
子どもの頃からずっと問い続けてきた疑問。

その答えはまだ見つかっていません。
けれど私の言葉や作品を「好き」と言ってくれる人がいて、
背中を押してくれる人がいて、
ほんの少し、“生きる理由”のような光に触れられた気がしています。

物語を書くようになった日々

最初に生まれたのは、三万字にもなる長編。
右も左もわからぬまま紡いだ、はじめての物語でした。

📘 時計の契約
noteで読む

その後も、毎日のように言葉を綴りました。
達成感とともに、燃え尽きたような感覚も抱えながら。
それでも「書く」と決めた自分に負けたくなくて、
一文も浮かばない日も、ただペンを握り続けました。

📘 孤独の勇者
noteで読む
──「狼が兎になろうとする」たったひとつのイメージから広がった物語。
なぜ狼は変わろうとしたのか。
その心の奥を描きたくて、気づけば自然に物語が生まれていました。

だから私は、今も紡いでいる

物語を書くことは、誰かのためである前に、
まずは「自分を整えること」でした。

言葉にしなければ呼吸ができないような苦しさ。
書くことは、私にとって唯一の呼吸法だったのかもしれません。

今では、その詩や物語たちが──
ポストカードになり、透明なカードになり、
そしてアクセサリーとなって、
“物語を纏うかたち”で、みなさまのもとへ旅立っています。

あなたへ

もし今、
何者にもなれずに立ちすくんでいるあなたがいるなら──

この幻想的な世界が、ほんの少しでも寄り添えますように。

物語を綴ることで私が救われたように。
あなたの心にも、小さなひかりが灯りますように。

赤ずきんと狼~もし、赤ずきんと狼が仲良くなれたなら~

「もし、赤ずきんと狼が仲良くできる世界線があったなら──」
赤ずきんは気づく、狼が本当は優しくて寂しがり屋だということ。
狼は知る、赤ずきんが本当は賢くて勇敢だということ。
“正義”の境界線が溶けていくような、もう一つの物語。
相手を知ること、信じることの意味を静かに問いかけます。

人魚姫~なぜ彼女は、泡になることを選んだのか~

愛を信じ、声を失い、それでも人間になろうとした人魚姫。
泡になっても、“愛”を貫くことに意味はあったのか──
それでも彼女は、自分で選んだ道を進んでいく。
儚くて強いその選択に、静かな尊敬の気持ちを込めて描かれた物語です。

彼と海月~海月とともに、ただここにいるだけで~

何者にもなれず、ただ日々を生きるだけの彼。
形にならない自分を責めて、苦しくなっていた心が、
ふわふわと浮かぶクラゲに出会い、こう思う──
「完璧じゃなくていい。ただ、そこにいてくれるだけでいい」
そんな不完全なままを肯定する、静かな再生の物語。